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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
戦に敗れるということ以上、敵に嗤われることはもっと辛い恥だった。無二無三な苦戦だった。わずかに諸方へ放った火によって、猛烈な城兵の突撃を幾分かくいとめてはいたが、そのうちに、
「鷲津の兵が背後から来る」
「丸根の敵も」
と、いやがうえにも、松平勢は重囲のなかに、乱れ立った。
当然だ!
誰も思った。
大高城の抑えとして、大高と対峙している敵の幾つかの砦を、まるで無視して、奥地へ進んで来たのである。
その上に、寺部へ火を放けたので、鷲津、丸根の敵は、
「さては、小人数の寺部を目がけて、松平勢は奇襲しかけると見えた」
と、思い、敢えてやり過しておいて、戦い酣と見るや、退路を断って、包囲をちぢめて来たものにちがいない。
「来たかッ。――鷲津、丸根の砦の兵が。――慥かにそれか」
石川数正、酒井与四郎、松平左馬助などの部将たちが、口々にあたりの兵にたずねた。駈け交い駈け交いながら、物見や足軽頭などが、声を嗄らして告げた。
「かなりの大軍です。鷲津、丸根の兵のみか、善照寺、中島などの砦の兵も、挙げてこちらへ襲せて来たようでござる」
聞くと。
石川、酒井などの部将たちは、初めて、合戦の目的を達したように、