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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
「ごんぞ。――具足櫃を。具足櫃を」
「はッ」
ごんぞは、跳び上がって、主人の前へ、すぐそれを抱えて来た。
彼は間もなく、供も連れず、深夜の道を、お城の方へ駈けていた。
貧しい一領の具足をまとい、太刀を横たえ、革たびに草鞋ばきで、宙を飛んで行った。
美濃――
と、聞いただけで、
「さては」
と、彼には直ぐ思いあたることがあった。ここ数年来、危険な状態をもちつづけている美濃の斎藤家に、内乱が勃発したのではあるまいかということだった。
(――何日かは必ず)
と、藤吉郎は、むしろその遅いのを不審とするほど、やがて来るべきものを、信じていたのだった。
――それだ!
彼は疑わなかった。
来て見ると果たして、清洲城の大手には、はや人馬の影がうごいていた。門を固めていた兵は、彼のすがたが、日頃の恰好とはちがうので、いきなり素槍を向けて来て、
「誰だッ。待て。通ることはならん」
と、叱ったが、藤吉郎が大音を張って、
「これは、お厩衆の一人、木下藤吉郎にてござる。深夜、お城近くへ、頻々と馬蹄の音の相継いで行くのに眼ざめ、何事やらんと、役目がら馳せつけて参った者――」と、いうと、