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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

――同じ不破郡の内である。

樋口三郎兵衛は、半兵衛兄妹を、幼い頃から知っていた。今、於ゆうから、小父さま――と、呼びかけられると、その幼い頃の彼女や半兵衛を思い出した。

「城門を開けて、二人を、本丸の書院に通せ」

遂に、彼も我を折った。

三郎兵衛は、具足を解いて、平服となってから書院へ出、兄妹を迎えた。

会うとすぐ、於ゆうに、

「大きゅうなられたな。木下家の奥に仕えていると聞いたが、早いものよ。わしが手に抱いて頬ずりすると、この髯面を痛がって、顔を掻いたりしたものじゃが……」

と、沁々いった。そして、

「半兵衛どのにも、度々のお訪ねに、無情く門を閉じたまま、無礼を重ねたが、戦国のならい、お互い武門に生きる者の辛いところじゃ。……察しられよ」

と、やがて、小やかな膳を調えて、これが一生の別れとなるかも知れぬ。月を肴に、一献酌もうと、打ち寛いだ。

明らかに、三郎兵衛は、討死を覚悟しているものと見られた。彼には、主君の浅井が、到底、信長に抗しきれるものとは考えていなかった。ここ半月や一月は支えても、やがて最期の日は近いと、観念しているふうであった。

「いや、お互い武士ほど儚いものはありません。