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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

09 第九分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页

青空文庫

かつて領内歩きのときには、あれもこれも、馬前で見かけた老若男女だったような気がする。

(――不愍な者どもよ、こういう憂き目を見すること、戦乱の世の常といえ、筑前、民の上に立ちながら、民に頼まれ効もないこと。しかも不時に越前軍の出撃あるべしとは、かねて知られながら、敵をして、かく誇らしめたるは、ひとえにわが不覚のいたせるところぞ。――ゆるせよ、ゆるしてよ)

そこらの死者にも、灰燼にも、また生ける人影へも、秀吉は詫びつつ馬を歩ませていた。そのうちに彼は何を見かけたか、

「虎之助、待て」

と、馬の口輪を止めさせた。

「彼方の焼け跡に、家を失うた者が大勢して、焦土にひれ伏しておるようじゃが、どうしたことぞ。飢えておるのか、泣いておるのか」

木村隼人佑、浅野日向、小姓組の面々も、秀吉のことばに、初めて広袤な焦土の中に、その異様なる一群の人間がいることを知り、みな不審そうな眼をこらしていた。

「あ。分りました」

石田佐吉だった。ふいに膝を打って、馬上の主人へ告げた。

「あれはたしか、今市観世音の跡でございます。観音堂の焼け跡にちがいございませぬ」

「観音堂のあとか」

「そうです。