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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

09 第九分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页

青空文庫

楔子

あれを明日でも、姉婿の持仏にさしあげろ」

楔子

鶏鳴におどろいて、ちょっと、横にはなったが、ほとんど、語り明かしたといっていい。

早暁の太鼓と共に、秀吉はもう衣冠して、姫山の社前に、朝拝していた。

寧子の部屋で雑煮をたべた。

そして本丸へ出た。

この日、正月二日、秀吉の下向と知って、遠近から年賀の礼に登城する者が、朝からひきもきらぬ有様だった。

秀吉は一々迎え、一々杯を与えて、やがて退がろうとする賀客も留めて、

「まあ飲んでゆけ。ゆるゆると」

小姓たちも忙しく、

「いざ、こなたへ」

と、他の寛いだ室へ案内して行くのだった。

そこには必ず、その前に通って、はや麗かな顔を揃えている幾組もの先客がいた。

本丸、西丸を通じて、客のいない部屋はなく、あなたで謡うと、こなたも謡い返し、満城陽気藹々であった。

午すぎても、秀吉の前にはなお、新たな賀客がたえず、その間に秀吉は、祐筆三人ばかりを側において、何か雑然と藩の扶持帳や庫帳などを展げさせ、

「それには小袖一襲をやれ。それには太刀をつかわせ。……待て待て、茶具には何がある。彼には、茶入れをやるがよいか、馬をやるがよいか」