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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「お待ちどおさま」
はじめの女給が銚子と盃を持って来て、もう盃を出していた。
「や、ありがとう」
謙作は煙草の吸いさしを前の灰皿の中へ入れてから盃を持って女に酌をしてもらった。
「すこしお温いかも知れません、お温ければなおします、如何でございます」
燗は飲みかげんであった。
「けっこう、けっこう」
「では、すぐお料理を持ってまいります」
女は銚子を置いてくるりと背後向きになった。
「おい、酒だ」
洋服の男が右の指端でテーブルの上を軽く叩いた。謙作のテーブルから離れて往きかけた女が足を止めた。
「まだおあがりになります」
それは愛嬌のない聞く者をして反感を起させる詞であった。と、洋服の男のテーブルがどんと鳴った。
「おい、なにがまだだい、姐さん、ばかにしちゃいかんよ、俺はお前さんのおしきせを飲んでるのじゃないよ、が、まあ、宜い、黙って酒を持って来た」
女は洋服の男の権幕に驚いたのかそのままむこうへ往った。
「あの玉があってみろ」
洋服の男は独りでこんなことを云ってから、またテーブルの上を叩いて思いを遠くの方へ馳せるようにしたが、その拍子に隻方の赤濁りのした眼がちらと見えた。