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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

※(ローマ数字3、1-13-23)

彼は驚いて女の顔を見た。女の濃艶な長目な顔が浮きあがったようになっていた。

「およろしければ、二三ばいつづけておあがりくださいまし、宜い気もちになりますから」

女はビンを持って二度目の酌をした。それと同時に女の二つの足端が右の足首に絡まるのを感じた。謙作はまぶしそうに眼を伏せた。

「お婆さんのお酌で、お気のどくですけれど」

謙作は隻頬で笑ってコップを持った。

「私も戴きますわ」

謙作がその方を見た時には、女はもうコップを赤く火照った口元に持って往って艶かしい笑を見せていた。謙作のまわりには華なかがやかしい世界が広がっていた。

「あなたの名はなんと云うのです」

「わたし名なんかありませんわ、そうですわ、ね、天華とでもして置きましょうか」

謙作はテーブルの端にやった己の右の手に暖かな手の生なましく触れたのを感じた。彼はもどかしそうにその手を握ったのであった。

※(ローマ数字3、1-13-23)

謙作は呼苦しい眠りから覚めた。それは花園の中を孔雀か何かのようにして遊び狂うていた鳥の翅が急にばらばらと落たような気もちであった。彼は二三度大きく呼をしてから眼を開けた。