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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
白い暖かな裸の体が草色の羽蒲団に被われていた。
謙作はびっくりした。それと同時に奇怪な詩のような印象が頭に蘇って来た。しらじらと明け離れた朝の光がその印象の隙から射して来るように感じた。彼は船に乗り遅れたことを思いだした。
「これは」
謙作は腹這になった。彼はひどく後悔した。昨日の船に乗って帰ると云う電報を打ったことを思いだした。彼はこの瞬間、八つになる女の子と五つになる男の子が己を待って母親と噂をしている容を眼前に浮べた。彼はたまらなく苦しかった。彼は寝てはいられなかった。彼はいきなり起きようとして、己も裸になっているのに気が注いた。
「まだお早いですよ、もすこし休んでいらっしゃい」
女はうす目を開けていた。謙作はじっとしてはいられなかった。
「いや、こうしてはいられない、洋服はどこにあるのでしょう」
榻の枕元の台の上に乱れ箱に入れて洋服やシャツが入れてあるのが見えた。彼はすらりと羽蒲団を横に脱けだして下におりた。
「今から何をなさるのですよ」
「これから汽船会社へ往って来るのです」
謙作はシャツを着ながら云った。
「だって船はないのでしょ」
女はすまして云った。