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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「うちの坊ちゃん、宜いことをして見せてあげようね」
女はそう云ってから右の手を左の袖口に入れて、何か握ったものを引出した。
「その花が生意気だから枯らしてみましょうよ」
謙作の夢のようになっている頭にぴんと響いたことがあった。謙作はうっとりとなっている眼を務めて開けた。
「こんな花は枯れってしまえ」
女が右の手を鉢の上にさしたが、みるみるその花は萎れて花弁がぼろぼろと落ちだした。
「うちの坊ちゃん、どう」
謙作はそれをちょと見た後に、眼をつむってしまった。
「おや、睡っちゃったのだよ」
謙作は彼の女と島田の女で己を寝室に伴れて往くのを知りながら睡ったふりをしていた。夜の明け方になって一夜中睡らずにいた謙作の手は、女の左の腕に往った。
「なにをする」
女は急に起きあがろうとした。と、同時に女の腕に鎖で附けてあった袋が謙作の手に移った。
「あ」
女は叫ぶなり兎のように下へ飛び下りて寝室の外へ逃げた。
謙作はその袋を口に啣えて、手早く洋服を着て外へ出たが、彼の女はもう姿も見せなかった。
夜はもう明けていた。謙作の頭ははっきりしていた。彼は一丁ばかり往ったところで、一軒の旅宿を見つけたので入って往った。