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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「どうだね、今一つとっては」
「いいのよ、たくさん、ビールを一口飲ましてね」
お葉は汚れた手を手巾で拭いて、天風の飲みさしのビールを飲んだ。そこへ婢が入って来た。
「おみおりが出来たのよ、他にはもう通し物もないと思って、勘定して来たのよ、手廻しがいいのでしょう」
天風は体が苦しいのでもう冗談も云わずに、大きな蟇口を出してその中にしまってある、写真機店の番頭からもらった拾円紙幣二枚のうちの一枚をたくさんあるようにして手際好くだした。そして、それを持って婢が出て往くとお葉が云った。
「二人がいっしょに出ると感ぐられるから、あなたは通路のほうから一足さきへ出て、むこうへ廻って、巷の口で待っててください、私はあなたが廻った時分、巷から出て往くわ」
「いいとも」
「では、すぐ出てちょうだい」
「出よう」
と、云ったものの五円あまりの勘定のおつりがあって、婢に二円くれてやっても、まだ二円あまり残っているので、それを持って往きたかったが口には云わなかった。彼はしかたなしに一人で下におりた。
「おつりを」
帳場から勘定の盆を持って来た婢が云った。
「それは、君が二円執って、後は上へ」