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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

岡本は室の中のむせむせするのが厭だった。岡本の眼はお杉へ往った。

「おい、婆あ、そこの障子を啓けろ」

お杉はおどおどと起って往って障子を啓けた。風が出て梅の嫩葉は風に撫でまわされた。

「障子を啓けるといい気もちだ」

岡本は心もちよさそうに酒を飲んだ。松山は岡本から女のことを聞きたかった。

「あの媽あは、どうしたのだ」

「みっちりかけあった、他の亀鑑にならなくちゃならない富豪の細君ともあろうものが、怪しからんと云って、みっちり意見をしたものだから、あの女、泣いてあやまりやがった」

「そりゃ、そうだろう、当然のことだ、苟も有夫の女じゃないか、言語道断だ、それをまたとりもつ婆あは、一層言語道断だ、天人ともに赦さざる奴だ」

半ちゃんはむずかしい詞は知らなかった。

「そうだとも、ふざけたことをしやがって、ぐずぐず云や、おいらが三人を縛りあげて、鮫洲大尽の家へ曳きずってって、大将に引きわたすのだ」壮い男とお杉の方を見て、「どうだ、婆あと馬の脚」

松山が口を入れた。

「ただ曳きずって、旦つくに怒らすばかりじゃいけねえ、新聞に書いてもらうのだ、三段打ち脱きの大標題で、鮫洲大尽夫人の醜行とかなんとか、処どころに四号活字を入れて書きゃ、ぺちゃんこさ、どうだ」