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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

と、電車から降りたのか、それともむこうの方から来たのか、一人の女が小走りに来て、私と擦れちがったが、擦れちがう拍子に、その横顔を見ると、色の白い、面長の左の片頬から眼許にかけて、見覚えのある親しい顔であるから、朝鮮の方へ往ってると聞いていたものではあるが、東京に来ていないとも限らないので、線路の外へ出るなり、後を向いて声をかけようとしたところで、広小路の交叉点の方から来た電車に遮られたので、それの往き過ぎるのを待って見ると、もう、白い靄の中に五六人の人影が動いていたが、そのうちの何人が今の女であったか判らなくなっているので、諦めて大塚行の電車に乗ってしまった。電車に乗りながらも、彼女はたしかに彼の女であると思って、すぐ声をかけなかったのが、残念のような気がした。

その女と云うのは、私が田舎で小学校の教師をしていた時に教えた生徒であった。隣村の者で、まだその時分、隣村では高等小学校がなかったので、彼の女も私の村へ通学していた。なんでも一人女で、親類の男の子がそこの養子になることに定っていたところで、私といっしょにその学校で教師をしていた友人と関係が出来てしまった。