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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
それは私が上京して後のことで、女もとうに学校を卒業していたから、十八九にはなっていたろう、それから六七年になる。その時分であった。叔父の家の相続人になっている私は、相続のことで帰省していたが、用事も済んで近いうちに上京することになったので、久しぶりにその友人の家へ遊びに往った。
友人の家と云うのは、やはりその女と同村で、そこは漁師町であった。友人もその時は、もう私の村の教師を止して、己の村でやっていた。その友人には産婆をやっていた細君があって、三つ位の男の子と、出来たばかりの女の子があった。友人は私を伴れて、すぐ近くの防波堤の上にあった魚市場へ往った。もう夕陽に彩られた沖のほうから、勇しい櫓声がして、吾れさきにと帰って来た漁船からは、魚を眼まぐろしくあげて、それを魚市場の沙利の上へ一面に並べた。なんでも春で、きれいな鯛や鰆などがぴちぴちしていたことを覚えている。友人はその魚を仲買人の手から数尾買って帰り、それを己で料理して、私に御響応した後で、
「そのあたりを歩いて見ようじゃないか」
と云いだした。すると、傍で嬰児に乳を飲ませていた細君が、
「好い処がありますから、伴れてってお貰いなさいよ」