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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
道家が声をかけると老婆は顔をあげた。
「それはさぞ、御難儀でございましょう、ここはかがみと云う処でございます、むさくろしい処でおかまいなければ、野の中の一軒家で、夜は涼しゅうございます、お泊りになってくださいませ」
「それでは休ましてもらいたい、食物は持参しておる」
「どうぞお入りくださいませ」
「しからば、一時休ましてもらおう」
道家は土間へ入って草鞋を脱ぎ、弓と矢筒を持って脊をかがめるようにして、老婆の傍の莚の上に坐った。
「それでは、今、お粥をさしあげますから、次の室でお休みくださいませ、お道、お伴れ申せ」
老婆は後にいた女に云った。
「いや、食物は持っておる、どうか一と休みさしてもらいたい」
道家は立ったままで女の案内を待っていた。女は起って恥かしそうにして、
「それでは」
と云って、見つけに垂れた莚をまくった。そこにはほっかりした燈のある室があった。道家はやはり脊をかがめるようにしてその室へ入った。
「そこに枕もございますから、御ゆっくりお休みなさいませ」
と、云って女は莚をおろした。ほんのりした匂が室の中にただようた。
「はからずご厄介に……」
道家は先ず矢と矢筒を壁に立てかけ、それから腰の刀をとって坐った。