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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
彼は不審に思った。さっきの女が何故今までこんな処にいるのだろう。それとも己と同じように一人で退屈しているから散歩に来て遊んでいるのだろうか、しかし、あんなにうな垂れて考え込んでいるところを見ると何か事情があるかも判らない、傍へ寄って往ったら鬼魅を悪がるかも判らないが一つ聞いてやろうと思った。で、腰をあげて歩きかけたが、そっと往くのは何か野心があってねらい寄るようで疚しいので、軽い咳を一二度しながらいばったように歩いて往った。
女は咳と跫音に気が注いてこっちを見た。それはたしかにさきの女であった。女は別に驚きもしないふうですぐ顔をむこうの方へ向けてしまった。彼は茱萸の枝に衣の裾を引っかけながらすぐ傍へ往った。女はな顔をまたこっちに向けた。
(あなたは、どちらにいらっしゃるのです)
(私、さっきこちらへまいりましたのですよ)
女が淋しそうに云った。
(それじゃ、宿にはまだお入りにならないのですね)
(ええ、ちょっと、なんですから)
彼はふと女は何人か待合わす者でもあるかも判らないと思いだした。
(こんなに遅くなって、一人こうしていらっしゃるから、ちょっとおたずねしたのです)