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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
薄い鈍い陽の光の中に釣人達は絵に画いた人のように黙黙として立っていた。彼はさっきの女のことをちょっと思いだしたので、見なおしてみたがもうそれらしい姿は見えなかった。
彼は何時の間にか懐に入れていた雑誌を執りだして読みはじめた。読んでいるうちに面白くなって来たので、もうほかのことはいっさい忘れてしまって夢中になって読み耽っていた。それは軍備縮少の徹底的主張とか、生存権の脅威から来る社会的罪悪の諸相観とか、華盛頓会議と軍備制限とか、そう云うような見出しを置いた評論文であった。そして、実生活の煩労から哲学と宗教の世界へと云うような、思想家として有名な某文士の評論を読みかけたところで、頭を押しつけられるような陰鬱な感じがするので、読むことを止めて眼をあげると、もう陽が入ったのか四辺が灰色になっていた。旅館で飯の準備をして待っているだろうと思ったので、帰ろうと思って雑誌を懐に入れながらふと見ると、右側のちょっと離れた草の生えた処に女が一人低まった方に足を投げだし、双手で膝を抱くようにして何か考えるのか首を垂れている。それは衣服の色彩の具合がさっき板橋のむこうで見た女のようであった。