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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
道夫は気もちがよかった。彼は体を真直にして歩いた。傘が何かにひっかかってざらざらと音をたてた。
(垣根にひっかかったのか)
雨は小降りになっていた。傘の右にも左にも、ろそう桑のような大きな葉をつけた木の枝があった。傘はその枝葉に支えられていた。両側に桑の枝葉があるなら桑の畑でなくてはならなかった。
(桑の畑があったかなあ)
終始その捷径を往来している道夫は、そこに桑畑のあることは知らなかった。
(駝師の庭ではないか)
※(「士/冖/石/木」、第4水準2-15-30)駝師の庭か桑畑の中か、往ってるうちには判るだろうと思った。彼はその枝葉に傘をとられないように傘をつぼめて歩いた。雨がまたざあざあと音をたてて降って来た。路はぬかっていた。彼は傘と脚下に注意しいしい往った。
(やっぱり桑畑かなあ、こんな処に桑畑があったかなあ)
桑畑のような枝葉の間の路は長かった。そのうちに雨の音がしなくなった。彼は隻手を外へ出してみた。雨はやんでいて雨水は手にかからなかった。雨がやんだのに傘をさしているのはつまらないことであった。彼は傘をたたんで、物を撲りつけるような恰好で傘の雫を切りながら左の手に持って歩いた。