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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

(ありがとうございます、あなたはこのあたりの旅館にいらっしゃるの)

(五六日前から、すぐそこの鶏鳴館と云うのに来ているのです、もしお宿の都合で、他がいけないようならお出でなさい、私は三島と云うのです)

(ありがとうございます、もしかすると、お願いいたします、三島さんとおっしゃいますね)

(そうです、三島讓と云います、じゃ、失敬します、ごつごうでおいでなさい)

彼は女と別れて歩いたが弱よわしい女の態度が気になって、もしかするとよく新聞で見る自殺者の一人ではないだろうかと思いだした。彼は歩くのをやめて松の幹の立ち並んだ陰からそっと女の方を覗いた。

女は顔に双手の掌を当てていた。それはたしかに泣いているらしかった。彼はもう夕飯のことも忘れてじっとして女の方を見ていた……。

讓はふと道の曲り角に来たことに気がついた。で、左に折れ曲ろうとして見ると、そこに一軒の門口が見えて、出口に一本の欅があり、その欅の後になった板塀の内の柱に門燈が光っていたが、それは針金の網に包んだ円い笠に被われたもので、その柱に添うて女竹のような竹が二三本立ち、小さなその葉がじっと立っていた。