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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「そんなものがあるものですか」
「では、おあがりくださいましよ、お酒のおあいてはわたしがいたしますから」
年増の眼は道夫の魂を誘った。彼は年増からはなれることがいやであった。
「足が泥だらけですから」
「おふきしますから、こっちへいらしてくださいましよ」
「そうですか、それでは」
道夫はよたよたと縁側へあがった。年増はすぐ寄って来て道夫の隻手をやわりと握った。
「どうぞこちらへ」
道夫は年増の導くままに縁側を左の方へ往った。
「ちょっとお待ちくださいまし」
道夫はたちどまった。年増の手にした雑巾であろう温な片が双足に来た。年増の香油の匂いが気もちよく鼻にしみた。
「さあ、どうぞ」
年増の隻手は道夫の肩にかかった。道夫は待合にでも往ってるような気になって女に体をまかして往った。
「ここよ」
そこは青い絹の夜具を敷いた室であった。
「ちょっと横におなりなさいましよ、酒も今持ってあがりますから」
年増の頬は道夫の頬にくっついていた。道夫はうつらうつらとしていた。そして、暫く睡ったようになっていた道夫は、尖のある女の声を聞いた。
「この野干、またふざけやがって」
それは紙燭のようなものを手にした島田髷の壮い女であった。