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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

※(ローマ数字2、1-13-22)

憲一は人違いをして呼びに来たものだろうと思った。

「私は、このむこうの旅館へ来てる者ですが、人ちがいでしょう」

すると少女が莞とした。

「いいえ、貴郎よ」

貴郎よと云われてもそうして呼ばれる心あたりがないのであった。

「でも、私じゃないでしょう」

少女はまた莞とした。

「貴郎よ、奥さまが、お待ち申しておりますわ」

「お、く、さま、奥さまって、どうした方です」

「いらしてくだされば、すぐお判りになります」

少女は憲一の手を執ってぐんぐんと引っぱった。憲一はしかたなしについて往った。

※(ローマ数字2、1-13-22)

憲一は少女に導かれて室の中へ入って往った。そこは十畳位もある広い室で、室のなかはいちめんに装飾をほどこしてあった。真中には印度紗をかけた長方形の紫檀の卓があって、その左右にはそれぞれ三脚の椅子が置いてあった。卓のむこうには燦然とした六枚折の金屏。壁には宝玉が塗り込んであった。憲一は眼を見はった。

「さあ、どうぞ」

少女はぽかんとしている憲一に椅子をすすめた。少女は憲一が腰をかけるのを待っていた。

「ちょっとお待ちくださいまし、すぐ、奥さまがまいります」