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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
憲一はきまりがわるいので俯向いていた。女がそれに眼をつけた。
「さあ、どうぞ」
憲一はしかたなしに盃を出した。少女がそれに酌をした。それは蒼みをおびたどろどろしたものであった。
「あちらからまいりました、お酒でございます」
女はそう云いながら己の盃を執った。少女がまたそれに酌をした。
「めしあがってくださいまし」
「は」
「男のくせに、遠慮なんかなさるものじゃありませんわ」
憲一は思いきって盃を口の縁へやった。それは香気の高い酒であった。
「二三杯つづけてめしあがれ」
女は憲一の気もちを硬ばらさないようにと勤めている容であった。憲一もいくらか気もちがほぐれて来た。憲一は思いきってそれを飲んだ。すると少女がすぐ後を満した。
「わたくしは、永い間、貴郎のような方のいらっしゃるのをお待ちしておりました」
憲一には女の詞の意が判らなかった。
「は」
「今日は、やっとその望みがかないましたから、これから家にいらしてくださいまし」
憲一は胸がわくわくした。憲一は思いがけない幸福に打っつかって己ながら驚いた。
そのうちに憲一は酔うて来た。その時どこからか壮い女の歌う声が聞えて来たが、それは人間の魂を揺りうごかすような声であった。