轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页
「私は好まない」と甲斐は云った、「私はこういうことには不向きな人間だ」
「此処だ」と周防が立停った。
そこは八帖ほどの、書院窓の付いた部屋で、周防の常居の間という感じだった。二人がはいったとき、安芸のうしろにいた一人の若い女が、立って、こちらへ目礼をして、静かに出ていった。
安芸は白の寝衣に白の括り帯。出ていった女も寝衣で、解いた髪を背中でむすんでいたのと、扱帯のはなやいだ色と、そうして、裾をさばく素足の、しなやかな美しさが甲斐の眼に鮮やかに残った。安芸が寝所から出て坐り、女がうしろから、安芸の髪を直していたものらしい、周防は燭台を近よせた。
「みごとな酔いぶりだった」と安芸が云った。
いま女が出ていったことなど、まったく関心のないようすで、二人が坐るとすぐ、甲斐に向かって云った。甲斐は黙って低頭した。
「わしは本当に酔いつぶれたのかと思った、飲むことも相当に飲んだようだが、これは本当につぶれたなと思ったくらいだ」
「もう少しお低く」と周防が注意した。
「田舎者は声が高いな」
安芸は苦笑し、敷物の上で坐り直した。それまでは右の膝を立て、その上に右手の肱をのせて、割れた寝衣の裾から、日にやけた、毛深い脛をみせていたが、坐り直すとともに、両手を膝の上にそろえた。