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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

かれらをして、いま、合力稲荷のまえにひさびさに出会せしめよ。――おそらくかれらは十年まえと同じ調子でいうであろう、こうしたことを……

「しばらくお目にかかりませんでしたね。――どうなさいました、その後?」

「有難う存じます。――相変らず、貧乏暇なしで……」

「いつ、けど、お目にかかったきりでしょう? いつでしたろう、あれは、このまえお目にかかったのは?」

「たしか、あれは、一昨年の……」

「一昨年?……と、まだ、ここに土手のありました時分?……」

「そうでございます」

「大した、それは、古い……」

「いかがでいらっしゃいます、お景気は?」

「といっていただくのも面目ないくらいのもので。――いえ、実際、全く不思議な世の中になりました」

「ほんとでございますか、このごろ横町の妓たちがみんな廓外へ稼ぎに出ると申すのは?」

「みんな、ええ、土手の飲食店へ入ります。――そうしない分には立ち行きません」

「左様でしょうかねえ」

「台屋だって、あなた、このごろじゃァ廓外の出前でも何でもします。――そのほうが利方です」

「…………」

「それをそうした算用にしないと、いつまでむかしのような料簡でいると、平八のようなことが出来上ります」