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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页
夜店ばなし
“幾日位だろう?……十日位だろうか?……”
と思った途端、ああそうだ、暦があったっけと、先刻観音さまの前で買った『昭和二十三年九星便』を、早速、役に立てました。
……十一日でした。
五分ほどして、わたくしは、聖天町のほうへ石段を下りました。そして、猿若町のほうへとあるきました。
月は、しだいに、そのひかりを増して来ました。……とともに、町々は濃い靄の中にひたり、ふたたびまた観音さまの境内に足をふみ入れたときには、どこにももう安らかなやさしいともしびのかげが瞬いておりました。
わたくしの胸に子供の時分のゆめが……この土地に育ったころのゆめが……五十年まえのゆめがよみがえりました。……そこにひらけたけしきは、震災も、戦争もなかった以前のわたくしの浅草でした……
――ふるさとよ……わが浅草よ、しずかに眠れ……
わけもなく、わたくしは、こういいたくなりました。久保守・画
(昭和二十三年)
夜店ばなし
*
……大風呂横町と源水横町との間の、不思議とその一つにだけ名のなかった横町の角に荷を下ろした飴屋のちゃんぎり。……そのちゃんぎりの一トしきりの音の止んだとき、両側の、どこの屋根の上にも、看板のかげにも、勿論広い往来のどこの部分にも、そのときすでに日のいろは消えていた。