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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

かわることなく、飽くまでしずかに、月も花もよそにくらしていたのである。――おそらく先生にしたら、髪の毛のだんだん薄くなって来たことも眉にしらがのまじって来たことも、それほどはッきり……たとえばはじめてそれをみ出したときにあってもそれほどはっきり老年の寂しさのわいて来るのを感じられなかったにちがいない。……と、わたしはそのとき、うそもかくしもなくそう思った。

「戯、戯談だろう、とんだこった。」

が、間もなくわたしは、むかし一しょに今戸橋をわたった仲間の一人によってあまりにそのいわれないのをわらわれた。わたしの思いえたことのあたらなすぎるほどあたらないのをむしろふびんがられた。

「なぜ?……どうして?……」

決して負けずにわたしはいった。

「どうしてって、君。」

むかしの仲間はそういったあとでくわしくそのわけを話してくれた。

……わたしは聞いたままをいうであろう。その二十幾年のあいだに先生、長い間の道づれだった奥さんをなくされた。そのあと二度目に迎えた奥さんにもすぐ先立たれた。その長いことの、かさねがさねの重病人をかかえての不幸な生活……そのあとに来た子供さんたちをかかえての不自由なやもめぐらし。