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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

尤も吾々は何も、物質の問題がギリシアに於て典型的な解決に到着したとは考えない。そうでなかったということをこそ、すでに述べたのだった。それは今日に至るまでの哲学問題一般の発達を抜きにしては、即ち今日に於ける物質問題の具体性を抽象し去っては、何の解決へも齎される筈はない。――だが、そのためには恰も、古典的な問題発展形態が、原始的な手懸りとなることが現に出来るというのである。

物質という哲学概念は第一に存在の概念であり、それが第二に無に対立する存在の概念となり、第三に、無の概念自身となるという、過去に於ける歴史的展開は、同時に、今吾々が追跡しようとする理論的展開の順序にもほぼなるだろう。ただ、ギリシアに於ける物質概念のこの歴史は遂に解決を持つことが出来ず、「プラトンの質料」の概念に至って行き詰って了ったに反して、吾々の場合は何か合理的な解決に行かねばならず、又行き得るだろうという違いがあるだけである。

哲学史を通じて物質という概念はありと凡ゆる様々な意味で用いられている。特に夫が至極ポプュラーな概念として大量的に用いられ始めたのは、恐らく十八世紀のフランス唯物論者達の啓蒙活動に負う処が多いと思うが、処がこの唯物論者が主として、当時世界観の新しい観点になるまでに台頭しつつあった実証的な自然科学――生理学乃至物理