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げんだいゆいぶつろんこうわ
現代唯物論講話
戸坂 潤
「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页
但し茲で世界観とは、広い意味に於ける哲学、即ち普遍的理論を意味するものとする。
元来人間そのものが一個の生物であるという基本的な事情のために、生物学は世界観――それは人間の自己認識としての人生観・人性論・人間学・と裏表である――と特別な縁故があるのは怪むに足りない。
生物学は、人間の主観を離れてそれ自身に存在する客観的な自然物を取り扱うのであるから、生物の世界以外の世界の認識から、生物研究のための考え方――イデー――を教えられるということは、恐らく可なりに困難であるだろう。それにも拘らず吾々は、例えばマルサスの人口論がチャールス・ダーウィンの進化論に決定的な影響を与えたという事実を知っている。ダーウィン自身の告白する処によれば、マルサスの適者存在・生存競争・の観念や、人口の幾何級数的な増加の思想は、彼をして従来持っていた種の不変の信仰をすてて、種の変化・発生・の見地に立たしめた一つの動機である(『種の起源』に於てもマルサスの名と所説に触れている個処がある)。云う迄もなくイギリスに於ける農業畜産技術の発達と、ビーグル号の探検に於ける観察がなくては、その実証的根拠を提供されなかったのではあったが、又一定の思想なくしては事実も事実として把握される事が出来ない。