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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

実際マルクス主義はその表面的な文化支配力を失ったにも拘らず、それはいつの間にか民衆の日常常識となって普及し浸透するようになって来た。夫が表面上退潮すればする程、この普及浸透の度が加わるのである。日本の所謂左翼が有っていた一種過剰な純粋性――それを公式主義とかセクト主義とか官僚主義とか其の他色々に云ったものだ――から来る反作用、がここに現われたのだったかも知れない。がとに角、日本型ファシズム・イデオロギーの公的で儀礼的な文化支配の下に、マルクス主義思想の民衆への常識化・日常化・は却って深められたということが、大切な点だ。ここに「持久的」なマルクス主義が、事実上成立している。でそうすれば、之が今日の日本文化を支配していない、と云うことは出来ない筈ではないか。

こうしたものがマルクス主義の所謂「退潮」というものの思想上の本質である。一体日本のマルクス主義社会は運動としての正統的な発達に較べて、思想・文化・としての正統的な発展が、較べものにならぬ程旺盛だった。だからしてこの思想上の「持久化」を無視して、わが国に於けるマルクス主義の退潮を云々することは、全く無知なことだと云わねばならぬ。