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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

真のヒューマニズムは「ヒューマニズム」の反対物だというようなことでもあったら、収拾のつかないことになりそうだ。――それに、ルネサンスはヒューマニズムの発生と共に、正に唯物論の新しい形態の発生期でもあった。それ以来ヒューマニズムと唯物論とはどういう関係を保って来たか。この点常識では必ずしも明らかになっていないのである。一緒に発生したものがいつまでも一緒に手を取っているとは限らない。一方が他方を抜くとか他方を限定したり制限したりするということは、容易に想定し得るものとしなければなるまい。

では一体、まず第一に、今日の日本の所謂「ヒューマニズム」とは何か。三つの場合を区別しなければならないようである。その一つは「ヒューマニズム」というのが一つの立場や主張であるよりも、寧ろ一つの問題の提起と、その問題への興味の集中を提案する、ということを意味する。つまり人間性(ヒューマニティー)という問題を、テーマを、思想乃至文化の前面に押し出すというポーズを意味する。この際のヒューマニズムは主義主張のイズムではなくて、人間性問題の健在を指す意味でのイズムだ。して見れば之はまだ何等の思想体系でもなく又何等の文化上の説明原理でもないわけで、云わば一つの自然発生的な運動なのだ。