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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

従って夫は民衆を捉える何よりもの言葉だ。丁度日本に於ける忠君愛国や武士道の類であろう。リュマニテは人類文化の進歩を直接に連想させる。リュマニテの名を頂く文庫や、リュマニテという名の党の機関紙が存在し得る理由はここにあるのだが、処が日本ではヒューマニティーの観念はまだそこまで大衆的な人気を有っていない。だがそれ故にこそヒューマニズムは、一つの政治的文化的スローガンとして、新しい態度と新しい理想を象徴する。従来の日本の大衆は生活擁護のこうしたスローガンを殆んど全く持ち合わさなかった。今それが発見された、というわけである。ヒューマニズムがこの第二の形態に於て、台頭する所以である。

だが吾々はこういう意見を時々耳にする。ヒューマニズムこそマルクス主義に代るものだ。ヒューマニズムこそマルクス主義を止揚=廃棄するものだ、ヒューマニズム万歳、其の他其の他。ここでは明らかにヒューマニズムは唯物論に代る処の、従って唯物論を不用とする処の、効験あらたかな一つの哲学体系と見立てられている。ヒューマニズムは四百年以上の昔から存在するし、その言葉はいやという程世界中の人間の耳に這入っている、処が一九三六年度になって日本に於て、初めてこの哲学が発見された。