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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

吾々は眼又は指を動かすことによって一つの続起する表象の系列を得るが、この系列の記憶が取りも直さず空間に他ならない、と云うのである。だが、こういう説明をなし得るためには、人々は已に空間の表象自身を想定していなくてはなるまい。それに又之では、時間表象と空間表象とはどうやって区別されるかが判らない。

第二の考え方はA・ベーン(†1903)によって代表される。之によれば空間表象という何か特別な感覚内容があるというのであって、それは或る特殊の感覚――運動感覚――が有つ性質だと考える。時間表象に於ては運動感覚が触覚と結び付いていない、又は結び付いていても、その触覚は運動感覚が変化しても変化しない。之に反して空間表象に於ては、運動感覚が必ず触覚に結び付いており、運動感覚が変化すると共に変化する。空間とは、この触覚の変化が一定の順序を形造る、ということに他ならないと云うのである。併し茲でも亦、空間表象を説明するのに空間表象自身の仮定を用いている、それに又空間の系列は音の感覚の系列の類とどう区別されるのか。

第三の考え方は、空間表象という特別な感覚内容があって、それが少なくとも直接には、感覚から生じるものではない、とする。