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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

しかし蒔岡家では、この遊戯のために西洋間の家具の飾り付けが始終滅茶々々にされるのには、少からず迷惑した。突然の訪問客などがあると、女中たちは先ず客を玄関に待たして置いて、総掛りでこれらの堡塁や特火点を片附けなければならない。或る時偶然シュトルツ夫人がテラスから部屋を覗き込んで、この有様に呆れながら、ペータアやフリッツはいつもお宅へ遊びに来てこんなことをするのでしょうかと尋ねたので、幸子が仕方なく肯定すると、夫人は苦笑いをして行ってしまったが、後で子供たちを叱ってくれたのかどうか、彼等の跋扈跳梁ぶりは一向改まる様子もなかった。

幸子を始め三人の姉妹たちは、西洋間の方を子供たちの遊び場所に明け渡して、昼間は大概食堂の西隣の、六畳の日本間へ来てごろごろしていた。そこは廊下を挟んで風呂場と向い合っているので、着物を脱いだり洗濯物を束ねて置いたりする場所に使われていて、南側が庭に面してはいるけれども、庇が深くて薄暗い行燈部屋のような所なのであるが、日が遠いのと、西側の壁に低い掃き出し窓が開いているのとで、日中でも冷え冷えとした風が通り、家じゅうで一番涼しい部屋とされているので、三人は争ってその窓の前へ寄り集って、畳に臥そべるようにしながら最も暑い午後の二三時間を過した。