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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
毎年の例として、彼女達は土用になると食慾が減退して「B足らん」になり、夏痩せをするのであるが、分けても平素から痩せている雪子の細り方は著しかった。彼女は今年は六月時分から脚気が起ってなかなか直りそうもないので、一つはそのための転地療養をも兼ねて出て来た訳であったのに、此方へ来てから一層脚が重くなったので、絶えずベタキシンの注射を姉や妹にして貰っていたが、幸子や妙子も皆多少ずつその気があるので、お互に注射をし合うのが、近頃での日課になっていたと云ってもよい。幸子は疾うから裸の背中が見えるような、後の割れたワンピースを着ていたが、七月も廿五六日頃になると、雪子の洋服嫌いまでがとうとう我を折って、観世縒で編んだ人形のような胴体にジョウゼットの服を着始めた。妙子も、三人のうちでは誰よりも活動的な筈であるのが、あの水の日の衝撃からまだ十分に恢復しきっていないらしく、今年の夏はいつものような元気がなかった。尤も洋裁学院も、あれからずっと休みなのであったが、夙川の松濤アパートの方は幸いに水禍を免れたので、製作の仕事を続ける分には差支えないのだけれども、ここ暫くはその方にも気分が向かない様子で、めったに仕事部屋へも出かけなかった。