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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
大きな不正も、或は企まれてるかも知れません。その両者に対する警告として、手頃な五十万円ばかりのものを捏造し、最も痛痒を感じそうにない僕にその罪を着せる。而も僕は、印刷用紙の問題をも持って旅に出ているので、僕に対する警告ともなる。見事な計略じゃありませんか。天元社にも案外知恵者がいますね。社長の頭から搾り出されたことではありますまい。」
余りに善良すぎる考え方だ。然しその底に、ひどく辛辣なものを含んでるようでもある。つまり、人の心を冷りとさせるような善良さだ。
沈黙が続いた。風雨はますます勢を増してゆくようだった。平家建てが並んでるせいか、屋根の上を、轟々と荒れ狂った巨大なものが押し通ってゆき、庭先や路地には闇が深かった。
何がどうしたのか分らなかったが、須田がもうすっかり酔っ払って、涙声で叫びだした。
「僕は悲しいんだ。ちきしょう、僕は悲しいんだ。」
「悲しかったら飲めよ。」と菅原は言った。
「僕は悲しいんだ。菅原さんまで、嘘をつくかと思うと、僕は悲しい。菅原さんは決して嘘をつかない人だと、僕は信じていた。」
「嘘なんかつかないよ。」
「いや、でたらめな嘘をついた。