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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

私の方が病気なのか、お父さんの方が酔っているのか、どっちかだね。ただ一つ、ふしぎなことがある。私はもともと、君の家とは親戚の間柄だというばかりでなく、お父さんにはたいへん世話になった。いろいろ援助を受けた。世話をし援助をするからには、する方にも好意があったわけだ。其後、どうしたものか、まあ私の不徳の至すところ、ふしだらの至すところ、だんだん疎遠になり、飲んだくれとか、ペンキ屋さんとか、有難くない愛称を頂戴した始末さ。ところが、最近、様子が変ってきた。君たちのことを言ってるんじゃないよ。お母さんや、お父さんのことだ。やって来ると、嫌な顔一つ見せられないし、親しくもてなされ、酒まで充分に飲まされる。つまり、松本家の酒庫が私に喜んで解放される。これは一体どうしたことなんだ。どういうわけなんだ。私はへんに落着かない気持ちだ。ひがんでるんじゃないよ。なんだか腑に落ちないんだ。どういうわけなんだ。」

酔いながら、饒舌りながら、北村は酒を飲んだ。千重子は考え深そうな眼付きになっていった。

「それはね、小父さまの存在の問題よ。」

「なんだい、存在の問題て。」

「小父さまがいらっしゃるということ、それが、お父さまにもお母さまにも、やはり心強いのよ。