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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

」

「勿論、そうですよ。然し、あの縁談、まだくすぶっているのですか。」

「仲人のかたが、たいへん乗気になっておられますし、こちらからは、はっきりした御返事を申さないでいるものですから……。いつぞや、あなたは、田島章吾さんのことを、社会の寄生虫とか蛆虫とか仰言いましたけれど、それも、言葉通りにお考えなすっているのではございますまい。甘えた総評の仕方もありますものね。例えば、わたくしどもの子供たちなど、あなたのことを、ペンキ屋さんなんて……。」

「いやどうも、手酷しいですね。然しそれも一面の真理で、私はその評語に甘んじていますよ。」

「いいえ、その失礼な言葉も、新聞紙上とちがって、子供たちが申す場合には、親しみを持った甘えたものになりますんですよ。千重子がいつでしたか、松本のことをソロバンだと申しましたが、あの理詰めな物の言い方を、そんな風に甘えて批評したのだと思われます。けれどふしぎに、松本にはこの節、ソロバンらしくないところが出てきました。健康診断書のことで怒ったのも、まあそうですが、天神下の家のことも、そうなんです。御存じでしょうね、あの湯島天神の下に、貸家を一軒持っております。