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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
五
五
小さな台風が房総半島の沖合を通過した、その影響で、東京は、午頃から可なりの暴風雨となった。風と雨との圧力が大地に押っ被さり、板塀を揺ぶり、樹木の枝を折り曲げ、水沫を立て、荒々しい呼吸をなして秒を刻んだ。夜になってもやまなかった。戸外には出られないが、屋内にあっても落着けなかった。
「なにか、ゲームをしない?」
言い出したのは千重子で、八重子がすぐに賛成し、順一は曖昧な表情をした。
ゲームといっても、マージャンは道具がないし、誰も知らない。トランプかハナフダの遊びだ。人数も三人で足りる。
「貴重な時間だが、お相手をしてやるから、それ相当なもてなしをするんだよ。」
「するわ。何がいいの。」
「紅茶と、水菓子と……お酒。」
「お酒なんか、お父さまに叱られてよ。」
「大丈夫だ。知ってるよ。安物の下等なウイスキーがある筈だ。あんなもの、お父さん飲みはしないよ。」
「いよいよもって……。」
「なんだい。」
「不良大学生。」
その不良大学生の、靴下のつぎをしていたみよやが、仕事を置いて立ち上ろうとするのを、千重子はとめた。
「いいわ、わたしたちがするから。」
トランプなら、茶の間より、洋間の応接室の方がよい。