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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
またその方が、父順造の書斎からも遠い。
飾附から家具の類まで、極めて尋常でそして可なり贅沢な応接室の片隅、円卓のまわりにソファーを引き寄せて、席を拵えた。洋間のせいか、風雨の音は柔らいだように思え、そしてむし暑い。順一は風下の方の窓を開いた。
ゲームとなれば、トランプにしてもハナにしても、八重子は慎重に一手一手を考え、千重子はめくり札の天運を楽しみにし、順一は無理やりに大きなヤクを狙うのが、いつもの癖だ。順一の狙いが偶然に当ると、八重子は札を投げ出して口惜しがり、千重子はけろりとして言う。
「山勘も、たまには成功さしてやらないと、可哀そうじゃないの。」
「負け惜しみを言うなよ。」と順一は応酬する。「山勘というのは、自分の能力に自信がなくて、お姉さんのように、ひたすら天運を当にすることだ。僕のは違う。自分の能力を自覚し、それに信頼して、大事を企てるんだ。山勘じゃないよ。」
「それでは、野心……野望……。」
「卑俗な言葉きり知らないんだな。そんなことを言うから駄目さ。自分の全能力を挙げて運命を開拓する、そういうチャンスを発見し、そのチャンスを確実に把握する……そんなこと、女には分らないかも知れない。