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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「また釣れた!」

と正三君はふたたび成功した。

「なんでしょう? 今度のは小さい」

「やっぱりバカです」

と杉山は見もしないで判定した。

「富田さん、僕はもうかえります」

と照彦様は二、三度餌をとられた後じれ始めた。

「どうかなさいましたか?」

「つまらない。今日はバカばかりです」

「まあまあ、そうおっしゃらずに。今にほんとうの魚が食います」

と富田さんがなぐさめた。正三君は自分の一番槍が若様のお癪にさわったと合点した。

「しめた!」

と折りから照彦様が勇み立った。大きなぼらを釣ったのだった。

「おてがら、おてがら」

「これは大物です」

「なんですか?」

と正三君がきいた。

「ぼらですよ」

と富田さんが小声で教えてくれた。

「それじゃ僕のもぼらです」

「きみのはバカだよ」

「でも同じです」

「いや、僕の方が大きい」

と照彦様は主張した。

「大きなぼらだ」

「大きなぼらだ」

と杉山と黒須先生が異口同音にほめた。照彦様はまもなくご機嫌が直った。富田さんも黒須先生も安心して釣り始めた。

「昼からの一番槍こそ僕がやってやる」

と照彦様はおべんとうを食べながらいばった。

「内藤さん」

と富田さんが正三君の耳元でささやいた。