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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「さあ、みんな、食堂へきてくれたまえ」

と照彦様が主人ぶりに努めた。

「僕はいやだ」

「僕もいやだ。べんとうを持っている」

「僕も持ってきた」

と三人は動かない。同級生もお客となると四角張る。

「いいじゃないか? さあ、ゆこう」

と正三君もすすめたが、

「いやだよ」

「ごちそうなんかするなら帰るよ」

とみんな立ち上がる。

「困ったなあ」

「それじゃここで弁当をたべたまえ。お茶を持ってきてもらうから」

と正三君が気をきかせた。

「そうしよう。僕たちもここでいただく。それならいいだろう?」

と照彦様は帰られるのが一番つらい。

近朱者赤

近墨者黒

水随方円器

人依善悪友

と対句が二つ学習室の黒板に書いてあった。真正面だから目につく。ソロソロ弁当をたべおわった細井君は、

「オイオイ、メンタル・テストがでているよ」とささやいた。

「いやだぜいやだぜ。僕はもう帰る」

と高谷君はからだをゆすぶってみせた。

「これかい? これはなんでもないんだよ」

と照彦様は初めて気がついた。

「先生が出てくるようなら僕はほんとうに帰る」

と松村君も噂をきいて恐れている。

「読んでみようか」

と正三君は度々のことだから驚かない。