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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「若様はけさ学校でおのどがお痛いとおっしゃいました」

と正三君が思いだして申しあげた。

「よけいなことをいうな」

と照彦様は正三君をにらみつけた。お殿様がご不在だと若様がたも多少荒い。

「すずしくなりましたから、またソロソロ寝びえでございましょう。わるいようなら早くお医者様に見ていただかなければいけません」

と奥様がおだやかにおさとしになった。

「ほんとうになんともないんです」

「おせきは出ませんの?」

「ええ」

「おのどは?」

「痛くありません」

と照彦様は否定した。

「照彦は扁桃腺を切るのがいやなものだから、嘘をいうのだろう」

と一番上の照正様が笑った。

「そうですよ。だいじのだいじの扁桃腺ですからね」

とそのつぎの照常様もひやかした。照彦様はだまっていた。お兄様がたにはかなわない。

「とにかく、後からお熱を計ってみましょう」

とお母様がおっしゃった。

照彦様は食後お母様のお部屋へよってしばらく手間を取った。

「若様、いかがでございましたか?」

と内藤君は廊下で待ちうけてたずねた。

「熱はない」

「それはよろしゅうございました」

「内藤、きみはおしゃべりをしていけないね」