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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
お肝試しの会
と照常様は正直にいった。
「期せずして肝胆相照らしましたな。若様がた」
「はあ?」
「今晩はおもしろいことがございますぞ」
「なんでございますか? 先生」
と皆乗り出した。
「試胆会をいたします」
「はあ?」
「若様がたのお肝試しの会でございます」
「肝試し。ははあ」
「胆力養成会と申しましょうか? 裏のお山で催したいと存じますが、いかがでございますかな?」
「結構でしょう」
と照正様は賛成して、
「しかしいったいどんなことをするんですか?」
ときいた。
「夜の十時にお裏山の稲荷神社へお一人ずつおでかけを願います。あそこへ硯箱と帳面を用意しておきますから、ご参詣の証拠にお名前をおしたためになってお帰りください」
「それだけでございますか?」
「はあ」
「お安いご用です」
「肝は大ならんことを欲し、心は小ならんことを欲す。後日の物笑いになりませんよう、ご入念におしたためを願います。昔、私の同輩の北村喜二郎と申すものが、郎の字を落として帰りました。喜二郎の郎がなければ、喜二、即ちキジ、鳥の雉に字音が通じます。そこで雉子雉子ケンケン郎を落としたという評判が立ちました。そんなことがあっては武士の名折れでございます」