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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
昼弁慶
畑をほって埋めるがよい。ただし杉山をとがめるなよ、かわいそうじゃ。腕を打った上に、長く臭名を残すことであろう」
とおっしゃった。
「肩へ手がかかった時、おのれ妖怪ござんなれと、臍下丹田に満身の力をこめて」
と安斉先生はお得意だった。同じことを幾度でも話す。
「先生、先生は杉山ってことをご存じじゃございませんでしたか?」
と照正様は念のためにきいてみた。覚えられているようだと後が恐ろしい。
「いや、いっこう」
「ご老体でもおたしかなものですな」
「そこは昔きたえた関口流です。しかし杉山とわかれば、手荒いことはいたしません。とりおさえて説諭をいたすのでしたろうが、それ、虎と見て石に立つ矢のためしでございます」
「しかしやしき内に虎の出るわけはありません」
「後ろからいきなりかかってきたものですから、何物かわからなかったのです」
と安斉先生、このへんはなはだ曖昧だった。
「びっくりなすったでしょう」
と照正様はそれもたしかめたかった。
「いや、いっこう。おのれ妖怪ござんなれと、臍下丹田に満身の力をこめて……」
「妖怪の出るはずもありません」
「考えてみるとそうですが、ワーウウウっと唸りながら飛びかかりましたので、人間とは思いませんでした。