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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

正三君は勤め大事と考えているし、照彦様がはなすまいとするから、土曜日でも帰宅しないことにきめていた。

「どうですか? 一ぺんお母さんのお乳をあがっておいでになったらいいでしょう」

と奥様がおっしゃってくだすったが、

「このつぎにいたします。帰りたくないです」

と強いところを示した。照彦様は大喜びで、

「ボールをやろう」

と昼からさっそくお庭へさそいだした。正三君も遊びたいさかりだから、運動はけっしてお役目のご奉公でない。なんでも真剣にやる。しまいには二人ともくたびれて、芝生の上に寝ころんだ。

「やあ、雲が動いている」

と正三君はあおむけになったままいった。

「海のようだね」

「烏が飛んだ」

「また飛んだ」

「いまのは小さい。雀でしょう」

「きみ、きみ、雀を打ちにゆこう」

と照彦様が思いついた。

「パチンコですか?」

「空気銃だ。きみにはお兄様のを借りてやる。ゆこう」

「まいりましょう」

と正三君はすぐに応じた。空気銃は小学校時代の夢想だったが、お父さんが危ながって買ってくれなかった。いまそれが自由に使えるのである。学友でも子供だ。自分の楽しみが先に立つ。

伯爵家のおやしきには裏に広い畑があって、そのはてが雑木林になっている。