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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

「綾にしき」1892(明治25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页

青空文庫

報告を聞き「成る程夫は面白いが最う藻西太郎が白状して仕舞たよ、全かり白状したから外に何の様な疑いが有ても自然に消滅する訳だ」と云い取上る景色も無きを猶も目科が喋々と説立て漸くの事に「然らば」との変事を得、生田なる者に対する逮捕状を認めて差出すや目科は受取るより早く、余と共に狂気の如く裁判所を走り出、待せある馬車に乗り、ロイドレ街を指して馬の足の続く限り走せたり、頓てロイドレ街に達れば町の入口に馬車を待せ、幾度か彼の嚊煙草にて強て顔色を落着けつゝ、二十三番と記したる館を尋ねて、先ず其店番に向い「生田さんは居るか」と問う店「はいお内です、四階へ上れば直に分ります」と答う、目科は階段に片足掛けしが忽ち何事をか思い出せし如く又も店番の許に引返し「今日は生田に一杯振舞う積りで来たが生田は毎も何の様な酒を呑む店「何の様な酒ですか、常に此筋向うの酒屋へは能く行きますが目「好し、彼所で問うたら分るだろう」と云い大足に向うの酒店に馳せて入る、余は薄々と其目的を察したれば同じく酒店に馳て入るに目科は給仕に向い「あの青い口を仕て有る銘酒を持て来い」