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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

「綾にしき」1892(明治25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页

青空文庫

第五回(種々の証拠)

程の隔て無き交りと為れり目「全く相違ないのかね余「傷から云えば全く爾だよ、今に検査の医者も来るだろうから問うて見たまえ、尤も僕は猶お卒業もせぬ書生の事だから当には成らぬかも知れぬが医官に聞けば必ず分る」目科は又も空箱を取出しながら「此事件には猶だ吾々の知らぬ秘密の点が有るに極ッて居る、其点を検めるが肝腎だ夫を検めるには是から更に詮策を初めねばならぬが、爾だ更に初めても構いはせぬなア面白い初めようじゃ無いか好し/\其積で先ず第一に此家の店番を呼び問正して見よう」斯云いて目科は梯子段の際に行き、手欄より下階を窺きて声を張上げ店番を呼立たり。

第五回(種々の証拠)

店番の来るまでにて目科は更に犯罪の現場の検査を初め、中にも此室の入口の戸に最も深く心を留めたり、戸の錠前は無傷にして少しも外より無理に推開きたる如き痕無ければ是だけにて曲者が兎にも角にも老人と懇意の人なりしことは確なり、余は又目科が斯く詮鑿する間に室中を其方此方と見廻して先に判事の書記が寄りたる卓子の下にて見し彼のコロップの栓を拾い上げたり、要も無き唯一個の空瓶の口なれば是が爾までの手掛りに為ろうとは思わねど少しの手掛りをも見落さじとの熱心より之も念の為にとて拾い上げしなれ、拾い上げて検め見るに是れ通常の酒瓶の栓にして別に異りし所も