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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

「綾にしき」1892(明治25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页

青空文庫

第七回(馬鹿か、否)

て居るけれど伯父が何の刃物で殺されたか夫さえも知ぬじゃ無いか、君が短銃の問は実に甘かッたよ、彼は易々と其計略に落ちた、今度こそ彼れの無罪が明々白々と云う者だ、若し彼れが自分で殺したなら、なに短銃で無い短剣だッたと云う筈だのに」目科は簡単に「左様さ」と答えしが更に又「併し何方とも云れぬよ罪人には随分思いの外に狂言の上手な奴が有て、判事や探偵を手球に取るから余「だッて君目「いや/\僕は今まで色々な奴に出会したゞけ容易には少しの事を信ぜぬて、併し今日の詮索は先ず是だけで沢山だ、是から帰て僕の室へ来、何か一口喫べ給え、此後の詮索は明日又朝から掛るとしよう」

第七回(馬鹿か、否)

是より目科が猶も余を背後に従え我宿に帰着き我室の戸を叩きしは夜も早や十時過なりき、戸を開きて出迎える細君は待兼し風情にて所天の首にすがり附き情深きキスを移して「あゝ到頭お帰になりましたね今夜は何だか気に掛りまして」と言掛けて余が目科の背後に在るを見、忽ち一歩引下り「おゝ御一緒に、今まで珈琲館に居しッたのですか、私しは又用事で外へお廻りに成たかと思いました、遊でお帰り成るには余り遅過るじゃ有ませんか」