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おいついたゆめ

追いついた夢

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页

青空文庫

「それだっていい、おけいちゃんとならおれはどんな貧乏だってするよ」

「そしてあたしたちの子供にも、あたしたちのようにみじめな辛い思いをさせるのね、宇之さん……いいえ、あたしはいやよ、あたしは自分の子供にはそんな思いはさせたくないわ、あんただってそんなことはできない筈だわ」

宇之吉は黙って頭を垂れた。おけいは彼の手をそっと握り、怒りを抑えたような口ぶりで、云った。

「逃げちゃだめ、逃げるのは負けよ、ねえ、世の中はたたかいだっていうでしょ、宇之さん、……あたし五十両という支度金を取ったし、家のほうへも月々の物を取る約束をしたわ、向うへいってからもできるだけ詰めて、できるだけお金を溜めるつもりよ、……そしてこれならと思うくらい溜ったら、わけを話してひまを貰うわ、強がりを云うようだけれど、あたしきっと思うだけの物を溜めてみせる、きっと溜めてみせるわ」

怒りの宣言のようにおけいはそう云った。だがそのあとから心はよろめき、むざんなほど声がふるえた。

「あんたも強くなって頂戴、やけになったり諦めたりしないで、辛抱づよく、一寸刻みでもいい貧乏からぬけるくふうをして頂戴、……そしていいお嫁さんを貰って、仕合せに」