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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
彼はこの尾花屋でもう七人もこういう娘に逢った。こっちで出した条件がいいから相当よく選んだのだろう、なかに三人ばかりは惜しいようなのがいた。しかし彼はいそがなかった。すべての点で自分の好みに合う者、これなら満足だといえる者がみつかるまでは折合わないつもりだった。……その八人めがおけいで、今日は二度めであるが、四五日まえ初めて逢ったとき、だいたい気にいって、今日こうして躰を見る段取りになったのである。
娘は糠袋で頸から胸、腹から腿へと洗いながら、また湯を汲みに立ったりして、前後左右いろいろな角度と姿勢をこちらへ見せた。ことによるとおかみに云い含められたのかもしれない、それともまったく無心にそうするのか、ともかく躰の緊張した線や、まるみや厚みや、豊かなふくらみが、伸びたり盛りあがったり、柔らかくくびれたりするのを残りなく見ることができた。そしていかにもそれは美しかった。立ち跼みのときなど、かなり不作法な線が現れるのだが、それが少しもいやらしさやみだらな感じを受けなかった。十七歳という年齢のためでもなく、男を知らないためでもなく、なにかまったく別な理由、……云ってみれば芯にある浄らかさ、生れつきのつつましさがあらわれているようであった。