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おいついたゆめ

追いついた夢

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页

青空文庫

……それから彼はときどきやって来た、月にいちどくらいの割であったが、また訪ねて来てもおけいとはあまり口をきかなかったが、このあいだに、主人を待つ気持はだんだん薄くなっていった。

――やっぱり悪い事をした人で、それがわかって牢へでも入れられたのではないだろうか。

おけいはそういう不安につきまとわれ、宇之吉にも相談した。彼は尾花屋へいって慥かめたが、そこでも身許は知れないし音信はないという、……一年経ち、とうとう二年経ってしまった。

――宇之さんもお呼びなさいまし。

まる二年めの夏になると、吾平夫婦が頻りにそう云いだした。

――この辺はこんなに空地があるんだから、こっちへ来て植木屋をやったらいいでしょう、地面やなんかは私が心配しますよ。

おけいは心が動いた。自分のものではないが金はある、買うのが土地であるから、金をただ費消したことにならない。云いわけは立つと思って、宇之吉を半ばくどきおとすようなかたちで、妹と一緒に移って来させたのであった。今、――おけいと宇之吉が家のうしろにある丘の、松林の中に坐っている。

「ふしぎだなあ、まるで夢のようじゃないか、こんなことって聞いたこともないぜ」